自治体の財源が減る中、行政サービスの重点を決めてそこに集中しようという町も現れています。
高齢化率が30%を超える人口6,300人の福島県「矢祭町」です。
合併しない選択をした矢祭町。
しかし、小規模の自治体に手厚く配分されていた交付税制度が見直され、町の交付税は最大で8億円も減りました。
以来、職員を3割減らし、トイレ清掃も職員みずからの手で行うなど行政コストの削減を行っています。

「初めての時どうでした?」

職員
「やりなれなかったけど、今はだいぶ慣れた。」



7年前にオープンした「もったいない図書館」も利用者の少なかった武道館を改築してつくられました。
蔵書は44万冊に及びますが、すべて寄付で賄っています。
入り口に置かれている朝刊も再利用されています。

図書館職員
「午前中この新聞は役場で読みます。
図書館へはお昼休み終わって、1時頃取りに行ってこちらに入れます。」



しかし行政コストを削減する一方で、重点政策には十分な予算を充てているのが矢祭町の特徴です。
3億円近くを投じて充実させているのは、子育て支援。
幼稚園の授業料は月2,000円で周辺市町村の半額程度です。
さらに、第3子の誕生には祝い金が100万円。
ここ数年は出生数が下げ止まっています。

母親
「授業料とか町が半分くらい負担してくれるので、(子どもの)数が多くても他の町より負担は少ない。」



「お子さんは2人?」

母親
「2人です。」

「矢祭町は3人産むと…」

母親
「あと1人、ぜひ産みたい。」

小さな町でも地域に根ざしたサービスを提供することで自立に向けた一歩を踏み出せると考えています。




その一方で、ハコモノを、新たに作って、負担が増えた感じの所も・・・。






自治体の数を半減させた平成の大合併が今、地方を苦しめています。
国が15年前から推し進めた平成の大合併。
合併ブームは列島を駆け巡り全国の市町村は、3,200から1,700に減りました。
当時国は、合併すれば職員の削減や公共施設の統廃合が進み、自治体の財政が強化されるとうたっていました。

合併市 市長
「合併してサービスは高く、負担は軽くという、ばら色の夢を見た。」
                                         ※2008年に収録したインタビューです。

ところが、今、当時の青写真とは逆に合併した300以上の自治体が財政難を訴えています。
公共施設の休館や住民サービスの見直しを余儀なくされています。

合併市 財政課長
「かなりの覚悟で臨まなければ、今後の財政運営は厳しい。」

合併自治体の財政はなぜ悪化したのか。
平成の大合併を検証します。


合併に描いた夢 誤算つづきの自治体






人口4万3,000人の兵庫県篠山市です。
15年前、平成の大合併第1号として4つの町が合併して誕生しました。
合併により市役所の支所となった建物を訪ねてみると職員の数は、まばらで閑散としていました。

支所職員
「今は4人で(仕事を)しています。
ぎりぎり回るような感じです。」



実は、篠山市は今、深刻な財政難から徹底的な業務の見直しを迫られているのです。
職員を3割削減し、給与もカット。
さまざまな住民サービスも縮小や廃止を余儀なくされています。
子ども向けの博物館は1年のうち3か月しかオープンできなくなりました。

住民
「大変なんですよ、篠山市は借金で。
今から返していかないと、お金。」

こうした節約作戦の背景には地方交付税の減額があります。
合併に伴う特例が期限切れとなり、18億円も収入が減ることになったのです。

篠山市 酒井隆明市長
「行政がちゃんとやってくれていると思ったら、こんな状態になってしまっている。
何をしていたんだという思いは持たれると思う。」
                                         ※2008年に収録したインタビューです。





そもそも篠山市の合併の目的は、老朽化したインフラを整備することにありました。
当時4つの町が共同利用していたゴミ焼却場や斎場の建て替えには100億円必要でした。
小さな町が単独では負担できないため、合併して予算規模を大きくしようと考えたのです。
そのころ国も市町村の効率化を促す合併の推進にかじを切ります。





「市町村の合併が必要であるとの意見が高まってきております。」

合併特例法が成立し、市町村に合併を促すための優遇策が打ち出されました。
地方の財源不足を補う地方交付税の優遇です。





本来、交付税は、合併して自治体の規模が大きくなるとそれぞれが合併前にもらっていた合計額よりも少なくなる仕組みでした。
これでは合併が進まないとして、合併後10年間に限って交付税を減らさない特例が作られたのです。






さらに、もう1つの優遇策として合併した自治体だけが使える合併特例債が用意されました。
市町村が新たに借金するとき、その7割までを国が負担するという破格に有利な借り入れ制度でした。
合併を果たした篠山市はこれらの制度を使ってインフラを整備。
まず20億円を投じた斎場を建設します。
さらに、事業費80億円のゴミ焼却場も完成しました。
しかし、これだけでは止まりませんでした。
篠山市が利用できる特例債の上限は230億円。



そのうち200億円を使って市民センター、温泉施設図書館、温水プール、博物館など合併前の自治体ごとに次々とハコモノを建設していったのです。
合併特例債は、あくまで3割は市が返済しなければならない借金です。
その額は60億円にも膨れ上がりました。
巨額の借金の背景には将来、人口も税収も増えるという甘い見通しがあったといいます。

篠山市 合併管理室長(当時) 上田多紀夫さん
「合併効果やいろんな問題で6万人ぐらい、2割ぐらい増えるだろうと、6万人に設定した。」

しかし、予想とは裏腹に合併の僅か3年後人口は減少に転じます。
人口増加で賄えるはずだった借金の返済が重荷となり、そこへ交付税の減額が重なり財政危機へと陥ったのです。



篠山市 合併管理室長(当時) 上田多紀夫さん
「絵に描いた餅になってしまったことは事実。
6万人人口も施設をうまく活用することも絵に描いた餅になってしまった。」


こんなはずでは… 難しい行政の効率化






行政の効率化が、うたわれた平成の大合併。
しかし、そもそも効率化を実現することが困難な現実もあります。
人口7万7,000人の大分県佐伯市です。
9年前、9つの自治体が合併して九州で最も広い市町村になりました。
通常、合併すると役場を統廃合しますが、佐伯市では8つあった役場をすべて残し支所として使っています。
合併によって市の面積は900平方キロメートルになり、端から端までの移動には3時間かかります。

「市役所に行くことある?」

住民
「足もないのにどうやって行くんですか。
何か乗り物がないと佐伯市(中心部)には行けない。」

人口をもとに決められる国の想定では佐伯市の支所の数は2つ。
しかし、広大な面積を2つの支所ではカバーできないため8つの支所を残さざるをえないといいます。
さらに、南海トラフ巨大地震で大津波が予想されているため、避難誘導のためにも支所が減らせません。



佐伯市 清家和彦財政課長
「市民サービスに直結した部分や人命に直結した部分は、効率化は難しい。
合併によって効率化できないものもあるので、その点も踏まえて交付税の算定に反映してほしい。」


何のため誰のための“平成の大合併”




当時、自治省の事務次官として市町村合併の陣頭指揮を執っていた松本英昭さんも自治体の効率化が難しいことは認めています。
しかし、低成長の時代を乗り切るには合併が必要だったと強調します。



自治省 事務次官(当時) 松本英昭さん
「それぞれ一つの地域でたくさんの市町村が分立しているのは、かえって不利。
高度成長の時は分け前をもらう人が多いほど、分け前が全体として多くなる面もあった。
しかし、今度は負の遺産、負の分け前。
私はそういう意味で、合併をしなければよかったという事ではないと思う。」


平成の大合併から“10年” 自治体がピンチ



ゲスト新藤宗幸さん(後藤・安田記念東京都市研究所常務理事)

●交付税減額や借金 財政悪化など予想できたのでは?



当然、予想できたと思います。
つまり経済的に決していいという状況じゃありませんし、ちまたでずっとみんなが言ってたように、高齢化をしていくと、少子化すると。
そのことだけ考えても、財政状態がよくなるわけではないんですね。
ですけれども、この合併というのは政治的なコストが非常にかかる話なんですね。
(政治的コストとは?)
例えば今、5つの自治体を合併しようと。
国民健康保険料でも、あるいは介護保険料でもいいですけれども、この5つが全部、同じ額のわけないでしょ。
必ず高低がありますね。
そうすると、この合併を成立させよう、住民の合意を得ようという話になると、どうするかといえば、一番安いところに新しい自治体の料金を設定するわけですよ。
(合併の自治体の中に、住民負担の安い、例えば国民健康保険のところがあれば、安いところで合わせる?)
それからさっきの篠山の例もありましたけれども、もう1つは、旧市町村に同じような建物を造る。
そうやってみんなの合意を得る。
こういうコストがすごくかかりますから、当然、そのことをあまり見なければね、交付税の減額等々で、今、苦しくなるのは当然といえば当然ですね。
(しかもバブルの時代に、ハコモノの運営費が高くつくことは経験済み。)
してますもんね。
特に合併特例債は、建物にはつきましたけれども、管理運営経費は、全然対象外ですから、大きい建物を造れば造るほど、そういう管理運営経費がプレッシャーになって、迫ってきますよね。

●それでも特例債発行や合併に走ったわけは?

やっぱり、合併の1つの効率化を図るとか、あるいはそれで町を近代化するという、一種のそういう雰囲気に流されたとしか言いようがないんではないかなと思ってますけれども。

●特例債の発行 国はもう少し慎重になるべきでは?

そうですね、私もそう思います。
つまり、いかに合併させるか、そういう1つの誘因を次から次に出していく、のってくるという読みがあったと思いますね。
ただ、当時の言葉として、よく自己責任ということが、いろんな分野でいわれましたけれども、国側は別に割り当てたわけじゃないよと。
借りたのはあんたたちじゃないかと。
それは自己責任でしょと、こういう言い逃れもまたできますよね。
(国としては、地方に渡す交付税の額を減らしたい?)
もちろん全体としての経費を減らしたいということですよね。


節約大作戦 苦悩する自治体






8年前、7つの町が合併してできた香川県三豊市。
交付税の減額を2年後に控えています。
現在100億円ある交付税が最終的に60億円にまで減るため市は、行政サービスの根本的な見直しに着手しています。
議論の末、選んだのは業務そのものを有償ボランティアに委ねる改革案でした。
発足したのが、定年退職した地域住民などで結成された「まちづくり推進隊」です。



「もともとは何を?」

推進隊メンバー
「国鉄職員。」

推進隊メンバー
「仕事は化学工場へ行っていた。」

住民票の発行や税金の収納などを除き、支所のほとんどの業務を担っています。
この日は新たに転入してきた住民のためにゴミの分別ルールのチラシを手渡しました。
推進隊を活用することで23人の職員を削減。
年間2億円の人件費を節約しています。
地域のニーズを踏まえた推進隊の仕事は自治会や交通安全運動、防犯活動まで多岐にわたります。

推進隊メンバー
「おはようございます。
点検でまいりましたんで。」



推進隊メンバー
「これ、最近テストしてみた?」

住民
「いえ、全然してないけど。」

1人暮らしの高齢者が多い地区で始めたのが火災報知器の取り付け。

推進隊メンバー
「あのぐらいやったら寝とっても、目が覚めるやろう。」

一軒一軒、地道に回り200軒以上に取り付けました。

推進隊メンバー
「お邪魔しました。」

地域住民の発案で行われる推進隊のサービス。
行政は運営に関わらず、住民の自主性に委ねられています。



三豊市 横山忠始市長
「合併は地方のリストラではなく、地方分権の受け皿として合併した。
市民生活に密着するところは、すべて地方が裁量権と財源で持ってやる。
分権の受け皿作りは、どんどん進めている。」


何をあきらめ何を残す 自治体の模索






自治体の財源が減る中、行政サービスの重点を決めてそこに集中しようという町も現れています。
高齢化率が30%を超える人口6,300人の福島県矢祭町です。
合併しない選択をした矢祭町。
しかし、小規模の自治体に手厚く配分されていた交付税制度が見直され、町の交付税は最大で8億円も減りました。
以来、職員を3割減らし、トイレ清掃も職員みずからの手で行うなど行政コストの削減を行っています。

「初めての時どうでした?」

職員
「やりなれなかったけど、今はだいぶ慣れた。」



7年前にオープンした「もったいない図書館」も利用者の少なかった武道館を改築してつくられました。
蔵書は44万冊に及びますが、すべて寄付で賄っています。
入り口に置かれている朝刊も再利用されています。

図書館職員
「午前中この新聞は役場で読みます。
図書館へはお昼休み終わって、1時頃取りに行ってこちらに入れます。」



しかし行政コストを削減する一方で、重点政策には十分な予算を充てているのが矢祭町の特徴です。
3億円近くを投じて充実させているのは、子育て支援。
幼稚園の授業料は月2,000円で周辺市町村の半額程度です。
さらに、第3子の誕生には祝い金が100万円。
ここ数年は出生数が下げ止まっています。

母親
「授業料とか町が半分くらい負担してくれるので、(子どもの)数が多くても他の町より負担は少ない。」



「お子さんは2人?」

母親
「2人です。」

「矢祭町は3人産むと…」

母親
「あと1人、ぜひ産みたい。」

小さな町でも地域に根ざしたサービスを提供することで自立に向けた一歩を踏み出せると考えています。



矢祭町の行政改革を行った 根本良一前町長
「住民のため、郷土のためだけを考えていれば何ら問題ない。
すべての判断基準をそこへもっていけばいい。」


人口減少時代 自治体はどこへ



●有償ボランティア活用の取り組みについて



僕はそういう交付税の減額だけではなくてね、全体として評価します。
高齢化社会といっても元気なお年寄り、いっぱいいるわけですから、いろんな自治体の、自治体の仕事を手伝ってもらうというのはいいと思います。
ただ、今、画で見たようなこと、そういう労働だけではなくて、三豊なら、三豊の町をどうするかという、そういう意思決定にも参加していただいて、今までのいろんな人生上の知恵をそういうところで出していただいたらいいんじゃないでしょうかね。

●重点的に子育て支援 矢祭町の決断について

実に正しい決断じゃないでしょうか。
合併しないということはですね、かなり厳しい経済条件、財政条件に当面することになります。
ただ、同時に孤立してしまうんではなくて、元気な自治体というのは、やっぱり子どもの声が、あるいはいろんな世代の声がする自治体ですよね。
だから、削るところは徹底的に削って、先ほどの保育園の保育料にしたって、あるいは3子目以降の手当にしてもですね、移りたいという人がいっぱい出てくるんじゃないですか。

●財政悪化によって町から人がいなくなる心配も?

やっぱり、よく自治体の活性化、地域の活性化ということを言いますけれども、そのために企業誘致だとかなんとかって言うんだけれども、やっぱり人がいることですよね。
しかも、それもいろんな世代の人間が暮らす、そういう多世代の人間が暮らせる条件を行政はきちんと作る。
これがやっぱり必要なんじゃないでしょうかね。

●合併しなかった自治体のほうが財政不安が少ないという事態も?

全体的な状況を見ますと、合併しなかったところのほうが、合併したところよりも、財政状態は比較的よろしいです。
相対的な問題ですけどね。
というのは、やっぱり合併しないで単独で生きていくという、そのためには厳しいことをいろいろせねばならない。
そういう住民間の合意ができているということではないでしょうかね。
(合併してうまくいっている所も?)
もちろんです。
合併して、うまくいって、自分たちの過去の歴史、あるいは文化というものをですね、きちんと生かしている所はありますよ。
またそういう歴史や文化を大事にしている合併した自治体が元気にいっているということですよね。
だから、一概に合併が悪いとは言いませんけれども、町のきちんとした方向性を考えないで、やれ特例債だ、やっぱり交付税の算定外だというようなことに飛びついて、ハコモノを造ったからということですよね。
そこは反省すべきだと思っています。

●改めて地方自治ということを考えさせられる

そうですね。
結局、自治というのは自分の頭で考えて、どこかにすがらないで、頼らないで、生きていくということが、基本になければだめですよね


あっ?
すまん、
これ、NHKが、作ったって、ものすごく下に書いてあったわ^_^
コピペする時、気づかなかった^_^


許可、もらいにいっとく^_^










コメント

ミカエル
2015年3月8日6:15

あっ❗️すっごい下に書いてあったんで、コピペする時、全然、気づかなかった^_^
ふーん君、君、少々、自己紹介していかない?
何処の人?どんな仕事してる人?
少なくとも、鉄道が、趣味よね、きっと^_^

貴重な、情報を、どうもありがとう^_^

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