『「2」「経営破綻」を契機に劇的に改善が進むコトデンのサービス』
2015年7月1日 アニメ・マンガ「2」「経営破綻」を契機に劇的に改善が進むコトデンのサービス
その様に「利用者にも沿線自治体にもメインバンクにも見放されて経営破たんした」コトデンですが、この経営破たんを契機として再生計画の「コトデン100計画」の中で「平成14年度アクションプラン」を打ち立てて、経営破たん前は利用客に「要らない」と三下り半を突きつけられて居たコトデンのサービス改善を目指して実際に色々な成果を上げています。
その象徴がICカード「Iruca」の導入で有ると言えます。「Iruca」は2005年2月に総工費約8億円(内補助約5.5億円)の費用を投じて導入されたコトデンのハウスICカードでコトデン・コトデンバスを非接触でカードリーダーにかざすだけで利用できるICカードで、加えて定期券機能と回数で割引ができる回数券的な機能も持つICカードです。
今でこそ世間ではJR東日本のSuica等が有名で地方公共交通でもかなり採用例が広がって来ていますが、Irucaは未だ公共交通ではJR東日本のSuica・JR西日本のIcoca等大手でしか導入されていない状況下での地方交通では先進的な導入事例であり、2006年7月段階で77,000枚普及しているなどかなり使われているICカードで有ると言えます。
左:[3]コトデンのICカード「Iruca」が使用可能な自販機@仏生山 右:[4]「Iruca」の一般商店等での使用開始をアピールするポスター
加えてIrucaは鉄道・バスの「公共交通内完結のカード」と言う地方鉄道でのICカードの状況を一歩飛び出し、Suicaではキヨスク・ファミリーマート等で実用化している電子マネーとしてのサービスも「Iruca電子マネー実証実験」が昨年11月から行われていて高松市内の商店街の一部店舗で電子マネーとして使える様になっていると同時に、コトデンの駅では自動販売機でIrucaが使える等、「公共交通のハウスカード」と言う領域を飛び出した範囲まで利用が広がっています。
この実証実験はコトデン・高松市・香川大学・NTT香川支店が発起人の「高松デジタルコミュニティ構想推進協議会」であり経済産業省の実証実験メニューにより行われている実験ですが、地域の公共交通と地域商店街がICカードでコラボレートすると言うのは確かに東急の「せたまる」でも実験された事は有りますが、規模や実用性の高さや電子マネーとしての活用と言う点では先進的事例で有ると言えます。
過去には利用者に「会社は要らない」と陰口を叩かれたコトデンが、地域とコラボレートして電子マネーの実証実験をするまでになるとは、過去の状況から考えると正しく「革命的変化」であると言えます。高松の商店街は再開発で注目を集める丸亀町商店街等大きな商業集積が有る商業地域であり、その商店街群に片原町・瓦町駅が隣接するコトデンに取り鉄道利用客の増加を左右する重要な問題であると同時に、この様な「商店街とコラボレートして地域限定電子マネーとしての役割も持つ公共交通ICカード」をコトデンが持つ事は、コトデン・商店街両方に取り「顧客囲い込み」の効果が有る物であり、コトデンがその様な地域との協力に踏み切ると言う事は正しく「変りつつ有るコトデン」の象徴とも言う事が出来ます。
左:[5]改善の進むコトデンの駅舎@栗林公園 右:[6]お客様の意見を集めるイルカBOX@栗林公園
今や改善が進んでいるコトデンのサービスはIrucaだけでは有りません。それ以外の所でも着々と改善は進んでいます。
例えば今回利用した駅の中で、栗林公園駅は新築されて綺麗になっていると同時に自転車利用が多い高松の実情を示すように駐輪場とレンタルサイクルの施設が整備されています。この様な駅舎の改善は新駅建設が新生コトデン誕生後長尾線の公園通り・琴平線の空港通り駅が誕生するなど着実に行われている事に加えて、駅のトイレの改善が進む等(実際志度駅でトイレを使ったがことでん100計画で水洗に整備され綺麗な感じだった)利用者の目に見える形で進んでいます。
又今までコトデンが見向きもしなかった利用者の声を吸収するスキームも整えています。有人の各駅には「イルカBOX」が造られ利用者から意見が投書出来る様になっておりコトデンからの答えも掲示されています。又利用者の意見・要望はホームページの専用ページでもメールで吸収できるようになっており、其処でも「速やかな回答」が行われる旨が明記されています。これらの利用者の意見を集めるスキームに加えて、コトデン社内でも組織的に「サービス部」が「平成14年度アクションプラン」に基づいて平成14年8月に設置され「執行役員サービス部長・3名の専属スタッフ」を置くほどの力の入れようです。
これらの利用客へのサービス・満足度向上へ向けた取組は着実に功を奏していると言う事が出来ます。実際昨年初頭の真鍋社長の年頭挨拶内でサービス改善等の効果として「18年度に再生計画想定より利用客数100万人増」「平成17年10月の四国運輸局のアンケートで73%の人が良くなったと回答」と言う利用客の反応を取り上げています。
利用客数減少に歯止めがかからず、しかも利用者からは「コトデンは要らない」と言われ沿線自治体一部からは「廃止されても影響は少ない」と言われ経営破たん時にはコトデン存続の市民運動も起きなかった程地域や利用者に見放されていた鉄道と言うのが6年前の破綻時のコトデンの実情であると言う事から考えると、全体としての利用客減少傾向は微減と言えども止まらない状況の中で「想定より利用客減少が食い止められた」「アンケートで好意的な回答が大多数を占めた」と言う事は大きな成果で有ると言えます。
この様な劇的な改善は「経営破たんによる再生のための改革がもたらした効果」と言う事が出来ると言えます。コトデンの場合民事再生法申請と言うかなり厳しい劇薬を投じた結果、真鍋社長を始め経営陣に新しい人を招くことが出来て、加えて従業員も「一度法的に破綻した以上クビになるより改めた方が良い」と考え厳しい改革にも応じてサービス改善等に力を注いだと言うような、劇薬ショック療法の効果が今回の様な成果に結びついたと言えます。
交通企業に限らず世間一般の会社では「ワンマンオーナー会社の弊害」と言う物は非常に大きいと言えます。又その弊害を解消する為の改革は一筋縄では行く物ではなく一歩間違えれば弊害の毒で死んでしまうと言う事もコトデンの様にありえる話です。その様な場合企業再生には「ショック療法」が必要で有る事はコトデンが示しています。今回の再生計画で債権放棄や補助等で損や出費を強いられた会社や組織も有りますが、その劇薬の苦痛の代償として地域を支える企業が再生し利便性が上がり地域へのサービスも向上したのは大きな成果で有ると言えます。
コメント