8月5日の日記

2016年8月5日
2011年3月、九州新幹線(鹿児島ルート)が全線完成
2008年2月1日発行の18号より

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2010年度末の全線完成に向けて、九州新幹線(鹿児島ルート)の工事は進む。九州新幹線が「発車」していくことで、福岡にどのような影響を与え、そして九州自体はどのように変化していくのだろうか。

九州新幹線全線開業を控え、重鎮ら一堂に会す

「九州新幹線の全線開業で九州の一体化が進む。魅力ある九州新幹線を生かして九州の発展を図っていきたい」―――。今年1月18日に開かれた九州新幹線建設促進期成会の席上、会長の麻生渡・福岡県知事は、冒頭で力強く語った。

来賓として招かれた「ミスター整備新幹線」の異名をもつ小里貞利・前衆議院議員(自由民主党整備新幹線調査会参与)のあいさつに続き、工事を担当する鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)や沿線自治体の首長らが現状を報告した。

九州新幹線の運行を担当するJR九州の石原進社長は、全線開業にともなう山陽新幹線との相互乗り入れに関連して「現在、量産先行車の仕様検討をしている」と語った。

九州新幹線建設促進期成会でのヒトコマ。左から)麻生渡・福岡県知事、小里貞利・前衆議院議員、吉田宏・福岡市長、石原進・JR九州社長
新幹線沿線の自治体では、駅舎の整備にともない周辺開発や道路整備などに取り組んでおり、福岡県では2010年度までに約100億円の予算を投じて、アクセス道路を整備していく計画だ。

関係部署からの報告を踏まえた意見交換の場では、道路建設財源のひとつである「暫定税率」問題を俎上にのせた。席上では、「税率確保ができなければ、新幹線駅への道路整備ができなくなる」「まちづくりが大幅に遅れる」などの危惧する声が多く聞かれた。

新幹線が点(都市)と点(都市)を結ぶ線としてだけでなく、「面」(地域)的な広がりや効果を生むためには、新幹線駅への交通アクセス、まちづくりなど新幹線という交通インフラを取り巻く問題の複雑さを垣間見せていた。

2011年春、九州新幹線「つばめ」が博多駅へ


現在、九州新幹線(鹿児島ルート)博多~新八代間の建設工事は、2010年度末の全線完成に向けて急ピッチで進む。

工事延長121キロにおよぶ博多~新八代間の総事業費は8134億円となっており、建設工事の進捗率を予算ベースでみると2008年3月末時点で63・3パーセントに達する見込みだ。 建設工事をすすめる上で懸念された用地取得は都市部も含めて順調に進み、2008年1月1日時点での用地進捗率は99パーセントにも達している。

また、工事区間の約3割を占めるトンネル工事でも、昨年12月に九州新幹線で最長となる筑紫トンネル(全長12キロ)も貫通し、同じく進捗率は93パーセントと順調さをみせる。

九州新幹線(鹿児島ルート)が全線開業すると、博多~熊本間を最速約35分、博多~鹿児島中央間を最速約1時間20分で結ぶ。さらに九州新幹線の全線開業に合わせて実施される山陽新幹線との相互乗り入れでは、新大阪~熊本間が3時間20分前後、新大阪~鹿児島中央間が4時間前後の予定である。

部分開業で快走をみせる九州新幹線「つばめ」


順調に進む九州新幹線の沿線工事
2004年3月、九州新幹線は開業1年目に当初予測の約250万人を大幅に上回る約323万人を運んだ。この数字は、新幹線開業前の鹿児島本線(八代~西鹿児島間)の利用者約141万人の約2・3倍に相当する。開業ブームも去った開業2年目は、1年目をさらに上回る約337万人を記録して、3年目も約335万人をキープして、依然「快走」をみせる。

2007年3月18日、開業3年余りで九州新幹線「つばめ」の利用者数が1000万人を突破した。現在、新八代~鹿児島中央間を結ぶ九州新幹線「つばめ」の一日平均利用者約9500人のうち、過半数が県内居住者となっている。

このことは、通勤や通学をはじめ、買い物やレジャーなどでの県内の行き来に九州新幹線を日常に使っていることを意味する。事実、九州新幹線の通勤通学定期である「つばめエクセルパス」も発行以来、順調に数を伸ばして現在1日平均1100人余りが利用者している。部分開業から3年を経て、九州新幹線「つばめ」は地域における〝足〟として、地域住民の暮らしのなかに定着しつつあるようだ。

ローレル賞・Gデザイン賞が認めた九州新幹線「つばめ」


ローレル賞やグッドデザイン賞に輝く九州新幹線「つばめ」型(800系)車両
部分開業している鹿児島中央~新八代間は、全区間のうちトンネルが約7割を占め、さらに高低差の大きい地区を走るために急勾配が多い。

このため、急勾配に対応した新型車両として、JR九州はJR西日本の「ひかりレールスター」(700系)型車両をベースに「つばめ」(800系)型車両を開発した。「つばめ」(800系)型車両では、起動加速度を強化するために全車電動車にし、さらに全車両に振動制御装置付きサスペンションを備えている。

シャープなイメージの先頭車両デザインに加え、西陣織モケットの木製座席や日よけの木製ブラインド、熊本県産サクラ材の手すりや握り棒、八代産の縄ノレンを配した洗面所など、日本伝統の「和」を重視した独自の意匠コンセプトを採用、ローレル賞やグッドデザイン賞を受賞している。

また、九州新幹線「つばめ」では、始発駅と終着駅で流される車内放送に新幹線で初めて、日本語→英語→韓国語→中国語による4カ国語アナウンスを採用するなど、独自の国際性もみせる。現在、九州新幹線用として使用されている「つばめ」(800系)型車両は、全線開業後も引き続き、鹿児島中央~博多間を走る。その一方で、鹿児島中央~新大阪間の相互直通運転に向けた新型車両として、JR九州とJR西日本では最新鋭車両であるN700系をベースに現在、開発を進めている。

新幹線建設における費用負担の割合とは

九州新幹線(鹿児島ルート)の工事費は博多~新八代間の8134億円に加え、部分開業中の新八代~鹿児島中央間も含めると、総額1兆4424億円にも達する。このような巨額な建設工事を一体誰が、いくら負担しているのであろうか。

現在、建設中の九州新幹線をはじめとする整備新幹線の建設費については、1996年12月の政府・与党の合意にもとづき、国と地方自治体が2対1の割合で負担して、いわば「公共工事」として整備を進めている。

かつて、国鉄時代の新幹線建設が、国鉄の自己資金と借入金で整備した結果、国鉄債務増大の一因になった。この轍を踏まえて、整備新幹線については、返済不要の公共工事方式で建設されている。

建設自体は、旧日本鉄道建設公団の後を継ぐ鉄道・運輸機構が担当する。完成後は、鉄道・運輸機構が所有する線路や運行施設をJR各社がリース料を支払って、新幹線を走らせる「上下分離方式」となっている。

先日発表された2008年度予算において、国土交通省は九州新幹線や東北新幹線などの整備新幹線5路線に対する2008年度の総事業費として3069億円(前年度比432億円増)を予定している。

総事業費3069億円のうち、国が負担する2046億円の内訳は公共工事費は706億円で、既設新幹線(東海・山陽・東北・上越)からの譲渡収入が724億円、さらに将来の既設新幹線譲渡収入を担保にした借入金が616億円となっている。

新幹線建設における地方自治体の負担スキーム

2008年度予算では九州新幹線(鹿児島ルート)の博多~新八代間の建設工事費として、前年度に比べて225億円を上積みした1270億円を振り向ける重点配分となった。

来年度、九州新幹線(鹿児島ルート)の博多~新八代間での建設工事がすすむ沿線の地方自治体では総額の3分の1にあたる423億円を負担することになる。この自治体負担分のうち実に9割は、地方債の発行で賄うことが認められている。

さらに地方債の償還には、元利合計の半分については国からの地方交付税で補填される仕組みとなっており、実質的な地方自治体の負担額は18・3パーセントに留まる。

ちなみに九州新幹線(鹿児島ルート)の博多~新八代間を並行して走る在来線については、九州新幹線全線開業後も経営を分離せず、引き続きJR九州が運営していくことになっている。

鹿児島中央駅にみる、新幹線が地域にもたらす波及効果

新幹線開業によってもたらされるのは、移動時間の短縮や交通量の増加、通勤圏・通学圏の拡大だけでなく、商業機能の充実もふくめ多岐にわたる。

JR九州は、九州新幹線(鹿児島ルート)の部分開業に際して、鹿児島になかったターミナル併設型の総合商業施設としてアミュプラザ鹿児島をオープンさせた。

アミュプラザ鹿児島では、開業時の年間販売売上目標を160億円としていたが、2005年度には192億円、2006年度には202億円に達し、好調さをみせる。アミュプラザ鹿児島の好調な原因として、「鹿児島初となるスターバックスをはじめ、いままでなかった商業空間が若者を誘引した面が大きい。アミュプラザの利用者は、必ずしも新幹線利用者だけでなく、むしろ他の交通機関利用者の方が多い」と、指摘する声もある。

一方、駅自体も西鹿児島駅から鹿児島中央駅に名称を変更した。九州新幹線が部分開業前となる2003年度のJR九州駅別取扱収入ランキングでは、西鹿児島駅は熊本駅に次いで第6位だった。その後、九州新幹線「つばめ」の快走とともに翌2004年度には熊本駅を抜き去って3位に浮上、さらに2005年度には小倉駅も抜いて、不動のトップである博多駅に次ぐ第2位を占めるに至っている。

福岡県下での新幹線駅整備や再開発の動き


上から)久留米駅(仮称)、船小屋駅(仮称)、新大牟田駅(仮称)の駅舎外観イメージ図
九州新幹線の全線開業に向けて、約600ないし約700億円を投じてJR九州は新博多駅ビルの建設工事をすすめており、周辺のまちづくりも動き出しつつある。一方、沿線各地での新幹線新駅の工事に加え、沿線の地方自治体などが中心になって周辺整備が進んでいる。

福岡県内では、九州新幹線の駅として、久留米駅(仮称)、船小屋駅(仮称)、新大牟田駅(仮称)が計画されている。

久留米駅(仮称)は、現JR久留米駅の西側に隣接した形で新設される。このため、在来線の駅舎を改築するとともに駅東口の駅前広場の充実に加え、西口にも駅前広場や駐車場などを設ける計画だ。また、駅前地区に35階建て高層マンションを建設する開発計画も持ち上がっている。

矢部川流域の筑後広域公園内に計画されている船小屋駅(仮称)は、新幹線駅として全国初となる「公園の中の駅」として誕生する。新幹線船小屋駅には駅前広場をはじめ、駐車場やアクセス道路などの整備を予定している。さらに在来線の船小屋駅を南へ550メートル移設して、新幹線駅と併設する計画だ。一方、新大牟田駅(仮称)は大牟田市郊外、九州自動車道南関インターと大牟田市街地を結ぶ幹線道路とクロスした位置に新設する。新大牟田駅でも同じく駅前広場や駐車場、アクセス道路の整備などを進めていく考えだ。


福岡県企画振興部
亀井利一・交通対策課参事
新幹線効果のプラス拡大を図り、マイナスを抑制

「新幹線による時間短縮効果は、規制緩和と同じくらいのインパクトがある。九州新幹線は近年にないビックプロジェクトの完成であり、市町村と手を携えながら、新幹線開業効果が発現できるように取り組んでいきたい」と、福岡県企画振興部の亀井利一・交通対策課参事は語る。福岡県では、昨年暮れに武居丈二副知事をトップとする九州新幹線開業対策推進会議を発足させた。年明け早々に第1回幹事会を開催して、各関係部署への働き掛けを始めている。


快走を続ける九州新幹線「つばめ」
九州新幹線建設促進期成会の事務局を務める福岡県企画振興部交通対策課では、「新幹線効果のプラスをより多く引き出しながら、マイナス効果は極力抑えていきたい」(亀井参事)とする。

2010年度末に予定されている九州新幹線(鹿児島ルート)の全線完成に向けて、新幹線建設工事に留まらず、駅周辺の整備・再開発や沿線における交通アクセス整備などが具体的に動き出そうとしている。(近藤益弘)

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※当ページの内容は、2008年2月1日発行の18号に掲載されたものです。

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