『香港は、アメリカからの特権を奪われるのか…』
2019年8月13日 アニメ・マンガブルームバーグ
香港にとって最大級の問題が浮上している。中国人民解放軍はどう動くかということだ。
一段と過激化しつつある抗議活動が8週目となっても、反政府デモが弱まる兆しはほとんどなく、中国政府が人民解放軍を動員するのではとの懸念が広がりつつある。中国側もまたそうした観測をたきつけているように見える。7月31日には軍による暴動鎮圧演習の動画を公開した。
Inside The People’s Liberation Army Ngong Shuen Chau Barracks Open Day
中国人民解放軍、香港でのデモンストレーション(6月30日)
軍事介入は現実的ではないとみられるが、その可能性だけでも香港で既に緊張感を高めている。英国から中国に香港が返還されて22年たつが、人民解放軍の香港駐屯部隊がこれまで果たしてきた役割はごくわずか。その状況が変われば、香港のみならず中国にとっても、意味するところは極めて大きい。
最大の懸念は「天安門事件」が繰り返されることだ。1989年6月、北京の天安門広場に集まった民主化を求める学生らを武力弾圧したのが人民解放軍だ。同様の状況となれば、米国が香港に付与する貿易上の特権を撤回する可能性もある。
Hong Kong Braces for More Weekend Unrest After Tear Gas, Clashes
デモ参加者と機動隊(7月28日)
たとえ小規模な軍事介入であっても、香港の金融市場から資金が反射的に逃げ出す可能性があるとアナリストらは指摘。不動産は値下がりし、グローバル企業は香港での事業活動を再考することになるだろうとしている。
ブルームバーグ・ニュースが意見を聞いたアナリストの大半は軍の介入について、その後の深刻な影響を考えれば極めて可能性の低いシナリオだと分析している。最後の手段として中国の習近平国家主席が軍投入を検討するのは、反政府デモ隊が香港警察を圧倒し、中国政府の香港統治を危うくした場合に限るだろうという。
オーストラリアのラトローブ大学でアジア調査関連のエグゼクティブディレクターを務めるユアン・グラハム氏は「中国政府が行使し得る他のあらゆる手段を使い果たしたと感じるまで、人民解放軍を動員して抗議行動を鎮圧する公算は小さい」と指摘。「結局のところ、習主席は天安門の大虐殺を繰り返したとの汚名を着せられたくない」と話した。
Hong Kong Braces for More Weekend Unrest After Tear Gas, Clashes
機動隊に向かうデモ参加者(7月28日)
香港政府の報道官は先週、香港当局には公的秩序を保つ「完全な能力」があり、人民解放軍への支援要請は不要だと言明した。ただ、国家安全保障を損ねないことと中央政府の権限に挑まないこと、中国を弱体化させる基盤として香港を利用しないことを中国側が3つの原則とする中で、軍の介入があるかもしれないとの不安は3原則を巡りデモ活動家を強くけん制することになる。
中国共産党機関紙・人民日報系の新聞、環球時報の胡錫進編集長は先月の論説で、香港の「火消し役」として人民解放軍が活用されるとの見通しを弱めた。軍投入は極端なケースのみで、例えば過激な活動家が香港政府の主要機関を乗っ取る場合などに限定されるとの見方だ。
The Chinese People’s Liberation Army Headquarters and Hong Kong Skyline
中国人民解放軍の香港駐屯部隊本部ビル(中央)
ロンドンの国際戦略研究所(IISS)で中国国防政策・軍近代化を研究しているメイア・ヌウウェンズ氏は、中国人民武装警察部隊が動員されるかもしれないとみている。66万人から成る同部隊は準軍事的な組織で、天安門広場など要所の警備や新疆ウイグル自治区といった地域での混乱鎮圧で中国政府が頼りにしている。
Hong Kong Braces for More Weekend Unrest After Tear Gas, Clashes
機動隊がデモ隊に向け催涙ガスを使用(7月28日)
大和証券キャピタル・マーケッツ香港の頼志文(ケビン・ライ)エコノミストは、人民解放軍動員以外の「最悪のシナリオ」には香港での戒厳令発令や非常事態宣言が含まれると、7月25日の顧客向けリポートで予測した。
頼氏はインタビューで、北京による介入は米国が香港に与えている貿易上の優遇措置取り消しを招き、香港経済に壊滅的な打撃を与え得るとし、「人民解放軍動員の可能性はあるかもしれない」が確率はまだ低いと説明。その上で「もしそうなれば、香港にとって非常にネガティブだ」と語った。
香港にとって最大級の問題が浮上している。中国人民解放軍はどう動くかということだ。
一段と過激化しつつある抗議活動が8週目となっても、反政府デモが弱まる兆しはほとんどなく、中国政府が人民解放軍を動員するのではとの懸念が広がりつつある。中国側もまたそうした観測をたきつけているように見える。7月31日には軍による暴動鎮圧演習の動画を公開した。
Inside The People’s Liberation Army Ngong Shuen Chau Barracks Open Day
中国人民解放軍、香港でのデモンストレーション(6月30日)
軍事介入は現実的ではないとみられるが、その可能性だけでも香港で既に緊張感を高めている。英国から中国に香港が返還されて22年たつが、人民解放軍の香港駐屯部隊がこれまで果たしてきた役割はごくわずか。その状況が変われば、香港のみならず中国にとっても、意味するところは極めて大きい。
最大の懸念は「天安門事件」が繰り返されることだ。1989年6月、北京の天安門広場に集まった民主化を求める学生らを武力弾圧したのが人民解放軍だ。同様の状況となれば、米国が香港に付与する貿易上の特権を撤回する可能性もある。
Hong Kong Braces for More Weekend Unrest After Tear Gas, Clashes
デモ参加者と機動隊(7月28日)
たとえ小規模な軍事介入であっても、香港の金融市場から資金が反射的に逃げ出す可能性があるとアナリストらは指摘。不動産は値下がりし、グローバル企業は香港での事業活動を再考することになるだろうとしている。
ブルームバーグ・ニュースが意見を聞いたアナリストの大半は軍の介入について、その後の深刻な影響を考えれば極めて可能性の低いシナリオだと分析している。最後の手段として中国の習近平国家主席が軍投入を検討するのは、反政府デモ隊が香港警察を圧倒し、中国政府の香港統治を危うくした場合に限るだろうという。
オーストラリアのラトローブ大学でアジア調査関連のエグゼクティブディレクターを務めるユアン・グラハム氏は「中国政府が行使し得る他のあらゆる手段を使い果たしたと感じるまで、人民解放軍を動員して抗議行動を鎮圧する公算は小さい」と指摘。「結局のところ、習主席は天安門の大虐殺を繰り返したとの汚名を着せられたくない」と話した。
Hong Kong Braces for More Weekend Unrest After Tear Gas, Clashes
機動隊に向かうデモ参加者(7月28日)
香港政府の報道官は先週、香港当局には公的秩序を保つ「完全な能力」があり、人民解放軍への支援要請は不要だと言明した。ただ、国家安全保障を損ねないことと中央政府の権限に挑まないこと、中国を弱体化させる基盤として香港を利用しないことを中国側が3つの原則とする中で、軍の介入があるかもしれないとの不安は3原則を巡りデモ活動家を強くけん制することになる。
中国共産党機関紙・人民日報系の新聞、環球時報の胡錫進編集長は先月の論説で、香港の「火消し役」として人民解放軍が活用されるとの見通しを弱めた。軍投入は極端なケースのみで、例えば過激な活動家が香港政府の主要機関を乗っ取る場合などに限定されるとの見方だ。
The Chinese People’s Liberation Army Headquarters and Hong Kong Skyline
中国人民解放軍の香港駐屯部隊本部ビル(中央)
ロンドンの国際戦略研究所(IISS)で中国国防政策・軍近代化を研究しているメイア・ヌウウェンズ氏は、中国人民武装警察部隊が動員されるかもしれないとみている。66万人から成る同部隊は準軍事的な組織で、天安門広場など要所の警備や新疆ウイグル自治区といった地域での混乱鎮圧で中国政府が頼りにしている。
Hong Kong Braces for More Weekend Unrest After Tear Gas, Clashes
機動隊がデモ隊に向け催涙ガスを使用(7月28日)
大和証券キャピタル・マーケッツ香港の頼志文(ケビン・ライ)エコノミストは、人民解放軍動員以外の「最悪のシナリオ」には香港での戒厳令発令や非常事態宣言が含まれると、7月25日の顧客向けリポートで予測した。
頼氏はインタビューで、北京による介入は米国が香港に与えている貿易上の優遇措置取り消しを招き、香港経済に壊滅的な打撃を与え得るとし、「人民解放軍動員の可能性はあるかもしれない」が確率はまだ低いと説明。その上で「もしそうなれば、香港にとって非常にネガティブだ」と語った。
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