コピペ
ひとつだけ事例をあげます。ドイツでは9月26日、27日にアニメやマンガのファンが多く集まるドイツ最大のイベント「ドコミ」が開催されます。主催者によると1日の来場者数を1万5000人に限定したこのイベントのチケットは、土曜日の一日券および週末の通し券に関してはすでに完売しています。
「ドコミ」が開催される町デュッセルドルフがあるノルトライン=ヴェストファーレン州政府は、見本市に関しては「接触追跡と衛生ルールの順守」が可能となるコンセプトが十分に用意されてあることを条件に開催を許可しています。ドコミはこの見本市に関する枠組みを利用して開催するわけです。
2020年の記事 コピペです。
コロナ禍の中で開催の“ドイツのコミケ”に2万8000人が参加 どのように開催されたのか現地で見てきた
開催できた理由を現地で調べてきました。
[Kataho,ねとらぼ]
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ドイツ西部のデュッセルドルフで9月26~27日、アニメ・マンガファンイベント「DoKomi(ドコミ)」が開催され、約2万8000人(2日間のべ)が会場を訪れました。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大を受けて、日本の同人誌即売会「コミケ」をはじめとしてファンが集まる多くの大型イベントがリアルでの開催を見送っています。
ドコミ 入場口
一般入場口の様子。密にならないようにスペースが広く取られています
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ドコミはドイツのデュッセルドルフで毎年開催されるドイツ最大級のアニメ・マンガファンイベント(名前の由来は「ドイツのコミケ」)。個人クリエイターや企業のブースだけでなく、ワークショップやステージパフォーマンスが楽しめる欧米で一般的な「アニメコンベンション」形式のイベント。欧州の周辺諸国からもファンが集まる注目度の高い大型イベントです。(参考記事:これが“ドイツのコミケ”だ 特大ファンイベント「ドコミ」に行ってきました!)
ドコミはなぜリアルイベントを開催できたのでしょうか? 現地の状況をレポートし、その理由を探ってみます。
会場の様子は?
会場に入るためには、まず入場待機列に並ぶ必要があります。ここでは、消毒液による手指の消毒、体温チェックを行っていました。会場は、見本市施設の大ホールと会議センターを組み合わせて使用しています。
手を消毒してから列に並びます
通路は非常に広くとられており、ブース同士の間隔もしっかり確保し、密を避ける配置になっていました。混雑が予想される一部の通路は一方通行になっており、また消毒液が頻繁に設置されているのも目に付きました。
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ドコミ
商業エリアの様子
ドコミ
個人ブースのエリア。通路もブース同士もしっかりと間隔が取られています
ドコミ DigiKomi
同時開催されたオンライン版「DigiKomi」の配信ステージ
ドコミの感染予防コンセプトとは?
ドコミは開催に先立ち、感染予防コンセプトを発表しました。1日あたりの来場者数を1万4000人に制限し、会場の広さを10万8000平方メートルに拡張しました。これは2019年実績と比べるとおよそ参加者を半分に減らして広さを倍増させたことになります。
ドコミ
ステージも座席間隔をしっかり取っていました
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ドコミ
飲食コーナー。マスクを外す必要があるため、特に間隔を開けていました
来場者に向けては、基本的なルールとしてソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、消毒液の噴霧を定める一方で、警備員とボランティアスタッフに従うことを追加するなど、詳細なルールについては現地で従ってもらうような体制が取られていました。
ドコミ マジカルミライ
初音ミクのコンサート映像「マジカルミライ」の公式上映会も静かに鑑賞します
感染への不安は? 参加者に聞いてみた
一般の来場者や各エリアのスタッフ、個人・企業ブースで、感染への不安がないのか聞いて回りました。いろんな話しが聞けるのではと期待したわけですが結果ははずれ。全員が不安はないと答えました。話を聞いた人たちが口をそろえて言っていたのは、会場内の人はマスク着用や密を避けるなど予防対策ルールを守って行動しているということでした。だから、自分も心配していないという理屈です。実際に筆者の見た範囲でも、各自ルールをしっかり守って行動していました。
ドコミ コスプレ
コスプレのトレンドはアニメ「鬼滅の刃」でした
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ドコミ コスプレ
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」もよく見かけました
ドコミ ホストクラブ
ホストクラブ「スイート・スパイス」は同時接客人数を1グループまでに制限
ドコミ 痛車
「痛車」とのコラボに特化したグループを立ち上げたヤスミンさん(左)、ルイーザさん(右)は日本の痛車イベントに参加したいそうです
印象的だったのはマンガ出版社altraverseのヨアキム・カプスさんの言葉でした。カプスさんは、「感染への不安はあるが、それは日常生活でも同じこと。むしろルールが徹底されている会場内のほうが感染への可能性は低いのでは」と指摘しました。コロナ禍がまだ当分続くのであれば、2~3年の間、何もしないか、または「試みる」かのどちらかしかないとドコミの方針を支持しました。
マンガ出版社にとってはイベント参加によるファン・コミュニティとのコミュニケーションは重要な要素なので出展を決定したそうです。
主催者に聞いてみた
ドコミの共同代表のひとり、アンドレアス・デーゲンさんに会場で話を聞くことができました。
ドコミ 共同代表
ドコミの共同代表のひとり、アンドレアス・デーゲンさん
―― ドコミはなぜ開催できたのか?
デーゲンさん 政府が定めるコロナ対策は実施可能だからです。会場の運営会社と緊密に連携してきた他にも、保健当局や警察など行政組織とも定期的に意見交換を行い、準備を進めてきました。
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―― 大型イベントは開催禁止なのでは?
デーゲンさん 禁止されているのは不特定多数の人が出入りするイベントです。州政府のルールでは、見本市や会議など参加者が特定できるイベントは開催が許されています。ドコミはこのルールに則って開催しています。
鍵となるのは、追跡可能性を確保できるかどうかです。感染者が発生してしまった場合に備えて感染経路を遮断するために必要な措置です。
(筆者注:ドコミでは入場チケットに所有者の氏名、連絡先が印刷され、実際にどの人物が来場したかを把握できるようにしています。また、ドイツ政府が運用するスマホ向けの接触追跡アプリの利用も推奨しています)
―― 実際に開催してみた感触は?
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デーゲンさん うまくいっていると思います。これは来場者の行動モラルによるところも大きいです。私たちは過去にも、例えばコスプレの持ち込み武器についてルールを定め、守ってきました。ファンコミュニティを存続させるためにルールを作り、そして守っていこうという風土があると思います。今回の感染予防対策も似ています。守るルールが増えただけに過ぎません。
ドコミ フリマ
フリマエリア「Bring&Buy」への入場待機列の様子
―― 日本のファンやイベント関係者にメッセージはありませんか?
デーゲンさん ルールを設け、少しずつテストしていくのが重要だと思います。日本でもイベントが開催されるようになることを願っています(※)。
※編注:日本でも9月19~20日に京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)が開催されるなど、徐々にリアルイベントが開催されるようになってきています。
終わりに
ドコミ
最も混み合っていた商業エリアはピーク時でも肩が触れ合うようなことはありませんでした
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このドコミの開催実現には他のアニメファンイベントだけでなく、イベント業界全体が注目しているようで、商工会議所や業界紙がドコミの開催を報じていました。リアルイベントの今後の先行きにいまだ不透明なところが多い中、ドコミの開催実現は多くのファンに支持され、また他のイベント主催者を後押しすることにもなりそうです。今後に少し期待できるような望みが出てきたのではと筆者は感じました。
(写真協力:Lena Kluth)
著者紹介
Kataho:ドイツ、フランクフルト在住のアニメ・ボカロ好き。日本文化を通じたドイツと日本の交流に興味があり、ドイツ各地の日本イベントに参加(Twitter:@sakaikataho)
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